さあ、いよいよ富士山前の最後の登山!
高山の標高に馴れるということと、山小屋に1泊でご来光を見る、という富士山スケジュールを模した1泊2日で、信州の蓼科山に決定。
私はキンチョーしていた。
まず、山小屋泊。
良いウワサを聞いたことがない。せまい場所に何人か一緒に1枚の布団にされる、とか、布団が汗臭い、とか、水は使えないからお風呂ナシはもちろん歯も磨けない、とか、ゴハンもカレーがちょっとだけ、とかとか。
雨露をしのいで横になれる仮眠所、という認識なんだから当たり前なんだけど、「知らないオジサンが横で思いっきり寝返りうったらどうしよう…」と身震い。
それと標高。
山頂2,530mというからには、相当登らなきゃいけない。登りにめっきり弱く、今までビリッケツの私は、またもや仲間に迷惑をかけるだろうなぁー…という気の重さ。
ワンゲル部の隊長は「登山はそういうモンだから、みんなでゆっくり行けば良いですよ」と言ってくれたけど…不安。登りきれるだろうか。
事前に隊長に案内してもらったサイトで、写真を見ながら登山シュミレーション。
写真を見てると、頂上付近は岩場の段差がスゴそう。今までは山スカートで済ませてたけど、これはズボンがいるな。
山用のショートパンツを買った。
それとずっと気になってた、山ガールがこぞって履いてるタイツ。X字にラインが入ったやつ。
あれは“高機能タイツ”とか言うらしく、テーピングの要領で筋肉を吊り上げて補強してくれ、登り下りが楽になるとのこと。
買うなら、富士登山を前にこの蓼科から試したい。
値段を調べたら10,000円前後もする。えーっ うそーっ 高ーいっ! でも評判はすこぶる良い。きっと私のような筋力の無い者はあった方が良いに違いない。すーんごく迷ったけど、定評のあるワコールのCW-Xを、エイッ! と思い切ってポチッ。
そして雨具。
天気が思わしくなかったけど、今持ってるモノで足りるのか、試してみたかった。
高尾山前に買ったけど使ってなかったTHE NORTH FACEの撥水素材ソフトシェルに、防水スプレー。元々もってた普通のカッパ(上下で3,000円くらい)のズボンにも防水スプレー。この上下で行けるものかどうか。
ザックカバーと、スパッツ(足下に被せるゲイター)は買った。
化繊の軍手と、銀色のシート(非常時に体温保つヤツ)も買った。
1泊するってことは靴下がもうひとついるじゃないか。靴に合う専用のやつを買った。
ストック、今まで1本あって楽だったな。よし、2本にして4本足で安定感を計ろう。買った。
…で、今までいくら費やしたんだよ…計算がコワイ。
けど、こうやって道具が少しずつ揃っていくのも楽しいもんだ。
前置きが長くなったけど、こんな感じで、今回は大人8人でいざ蓼科山へ。
↓ 新宿7:00発のスーパーあずさで茅野へ。茅野から路線バス1時間。窓の外では雨が…ヤバイなぁ。登山口に着く前に、バスの中で雨具を装着。
ちなみに高機能タイツは、家で履いた途端に足が軽くなるような気がした。

↓ バス停下車すぐの「女神茶屋」前で雨用に装備を整えて、出発前の記念撮影。
「なんか我々、山っぽくてカッコイイじゃないですかー」なんて笑う。高尾山から装備だけは成長したモンだ。

↓ 11:00頃。登り始めは低い笹の道。傾斜はゆるいけど、すごくぬかるんでて歩きにくい。防水スプレーした上着が、雨を玉のように弾いてて嬉しい。

↓ そのうち樹が出てきて、傾斜がキツクなってきた。雨もシトシトやむ気配無し。うー、しんどいなぁー。

↓ だいぶん岩を登って疲れた頃、ちょっとした広場に出たので、ザックを降ろしてお昼休憩。髪は雨と汗でお風呂上がりほど濡れている。カッパも内側からの汗で(?)濡れている気配。

↓ スコーンの包みが膨らんでる! 気圧が低いんだなー。もう空気が薄いのか。

↓ 隊長が豚汁をつくってくれた! この為に水と材料を背負ってきてくれたのか…感激!
雨で知らず知らず体が冷えてたんだね、暖かい味噌あじがとてもとても美味しくて、生き返る気がしたんだよ。またやる気も出たってモンだよ。ありがとう、隊長!

↓ 小一時間ほどゆっくりしてから、再出発。でかい岩の登りが続く。

↓ 手を使ってよじ登るような所もたくさん。ストックは危ないのでザックへしまう。

↓ 岩が無い所は、こんな大きな水たまりも。ゴアテックスの靴で良かったー。(コロンビアなのでオムニテックだけど)

↓ もうこの辺は雨が本降りで寒くなってきた。着てても着てなくても変わらないんじゃないか、くらいのビショ濡れ状態になってきてツライ。どこでもドアがあったらお家へ帰りたい。というか、屋根のある暖かい地上へ帰りたい。空気も薄いのか、息もゼーゼー、空気も冷えて、かなりしんどい!
おまけにコンタクトにゴミが入って取れなくなって、痛い痛いと、かなり立ち止まってしまった。雨に打たれながら休憩して体温が下がるのは、生命の危機をうっすら感じる。なるべく早く山小屋へ行かなきゃ…と思う。

↓ 「縞枯れ現象だよ!」と声をかけられるものの、心の中で「そうだねぇー…」と思うだけ。それくらい疲れてる。とにかく地道に先へ進まなきゃ。岩をハデに登り続けるのは、すんごく疲れる。腿が上がらなくなってくる。(というのは私くらいで、若い皆は楽しく登ってたかもしれないけど)

↓ 縞枯れが終わると、いきなり樹がなくなって岩ばかり積み上げたような場所に出る。あ!「山頂←」ってペンキで書いてある! ワ〜ッ! 先は見えたゾ! この表示に元気づけられる!!

↓ 大きな岩を、トットット…と渡るのは、アスレチック感覚でなかなか楽しい。息が上がらない程度の登りだからか。先ほどまでの登りと気持ちが全然違ってウキウキしてくる。
行く先に、目指す山小屋が見える。「わーい!」

↓ 山小屋チェックインはあとにして、すぐそこの山頂を目指す。
山頂に立つ人が霧の中からうっすら見えてくる。歓声が聞こえてくる。あそこまで行けば…!

↓ 山頂には先に着いた仲間が待っていた。雨に打たれてみんな疲労困憊。それだけに頑張って登ってきた頂上は嬉しい!
みんなで「大成功!」のポーズ。イエーイ!!

↓ 周りを見渡すと岩ばかり。月面かどこかみたい。

↓ 蓼科山頂ヒュッテにチェックイン。17:00頃。みんなビショ濡れなので、着替えてから中に入って下さい、と言われ、まず倉庫的なところへ。
乾いた服に着替えるというのは、こんなにもイイものなのかぁ。ふんわりと安心感に包まれる。
と同時に、下着から靴の中まですべて濡れていることに気付く。ザックカバーもあの雨には耐えられなかったらしく、ザックの中まで濡れている。着替えやタオルはビニール袋に入れてきたので助かった。ザックの中まで雨対策はするべきだな。カメラはもう水にやられてヤバイかもしれない。
濡れたものは、スキーの乾燥室のようにストーブを焚いた倉庫に吊るさせてくれた。

↓ トイレは200円。水場はその横にあった。歯磨きと顔は洗わせてもらった。

↓ 着替えるとすぐに夕食。体が冷えて寒い。山頂だから、ただでさえ気温が低いのに、セーターを着ててもカゼをひきそう。

↓ 夕食にハンバーグとは!全く期待してなかったので超嬉しいー! 野菜もたっぷり! お味噌汁とゴハンはおかわり自由。
↓ 夕食後、雨が上がって雲が切れてきたので、外へ出てみたが、夕日は見られなかった。写真は八ヶ岳の頭の方。
部屋へ戻って皆でワイン。19:30頃「そろそろ電気消したいので…」と宿の人に言われ、就寝へ。節電、節電。

↓ 寝床は屋根裏部屋に男女とも一緒になって一部屋。ふとんが思ったよりフカフカで暖かく、嬉しかった。1人1布団あったし。そして私ら団体で片側を埋めてしまったので、奥と手前で男女を分けることもできた。向かい側も“男性は手前”“女性は奥”のルールになってたっぽく、イヤな思いはしなかった。
消灯が早くてなかなか寝付けず、そのうち聞こえてきた寝息が人それぞれの音色で、それが重なるもんだからなんか笑いそうになった。何度も起きたけど、ゆっくり休めた。

↓ 翌朝4:00頃、向かいの人たちが起き始めたので自然に目覚める。
4:30過ぎにセーターを着て暖かくして外へ出ると、日が登り始めた。空気は冷え冷え。

↓ みるみるうちに色が変わる。

↓ 雲に光が反射して、えも言われぬ色になってる。

↓ 神様の光のように、光が降り注ぎ、素晴らしいご来光となった。
↓ その時のご来光の動画。スケール感を感じでもらえるでしょーか。
↓ 朝ゴハン。しっかりしてて嬉しい。

↓ 山頂で蓼科山のバッヂをゲット。

↓ さて、山小屋を出て下り。
いきなり岩を激しく下りる。手をつき、一旦座っておしりを降ろしてからでないと、足を下ろせないくらい急。
行く先の緑の中に、次の目的地、蓼科山荘が見えている。

↓ 軍手とタイツがなかったら擦り傷だらけだったかも。
岩の隙間に靴が挟まって抜けなくなったりした。
「あぁ、猿飛佐助だったらナァ〜」
ピョン、ピョン、ピョン、と岩を飛ぶイメージだけが先を行く。

↓ 鎖場もあった。足首捻りそう。

↓ 蓼科山荘へ着いた。大変だったけど以外にすぐで、岩場を下るのはとても楽しかった。
暑くなって半袖+シャツになる。

↓ ここからは、林の中の階段っぽい道。ガレやザレが多い。

↓ そのうち笹の道へ。なんだか下りてきたなー、という実感。

↓ 鳥居をくぐった! 駐車場がある。わーい! 終わりか! 下りは早かったなぁー。

↓ と、思うものの、実はロープウェーまでまだ道があった。
起伏の少ない笹の道をずっと行く。

↓ やっとロープウェー乗り場まで来た!
嬉しさで「幸せの鐘」を鳴らす。あがってま〜す!

↓ 女神湖が遠くに開けて見える。「無事に下りてきたね〜!」みんなで記念撮影。

↓ ロープウェーでさらに下へ。脇道を登ってくる登山者も見かける。ゴンドラ乗っちゃえば良いのにー。

↓ ロープウェーを下りた所にあるホテルで、日帰り入浴をさせてもらう。暖まるって、なんて素晴らしいことなんだ! 生き返るわー。
そこで食事をし、ソフトクリームを食べて、新宿行きの高速バスへ。

↓ 帰って靴を見たら、ドッロドロに汚れてた。よく頑張ったね、靴。

蓼科山へ登ってみて。
山小屋が、意外に食事も布団も良くて、満足だった。
悪い想像はしておくもんだなぁ。
登りの雨は本当に辛かった。傾斜もキツかったー。
自分が用意した雨具上下は用をなさなかった。あれじゃ本格的な雨はダメだ。
世の中にゴアテックス素材ができる前は、森林限界があるような高山で雨が降ることは、ほとんど遭難を意味したらしく、昔は簡単に死者が出たそうだ。
今は良い雨具と下着があるので、体温の温存ができるらしい。装備、大切。
透湿防水の良い雨具を買わなきゃな、と思う。
一方、あんなにキツイ傾斜の岩場を、カンカン照りで登らなきゃいけなかったら、それはそれでバテバテでキツかったに違いなく、雨で涼しかったのがまだ良かったのかもしれない。
ともあれ、あの岩場の登りは、私には辛かったー。空気が薄いのもあったのかも。ま、ゆっくりだと行けるんだけど。表示のたぶん2倍は時間がかかりそう。
前回の武甲山みたいなエネルギー切れが怖くて、機会があったらオニギリにカロリーメイトに飴にウィダーインゼリー…食べ続けていた私。
山から下りてきたら2kg増えていた…Oh! No!
それにしても蓼科山っていうのは、「笹」「樹」「縞枯れ」「岩」と、エリアがはっきりしていて、景色が変わって行くのがとても良かった。
樹々も東京近郊の山には無さそうな感じで、信州の山の美しさを感じた。岩もカッコ良かったし。
ご来光もとても美しかった。
総じて、良い会だったなぁー、と。
ふと思う。何のために山に行くのか、と。
もしかして、大袈裟に言えば「生還しに」行ってるのかもしれない。一度死にに行って、ちゃんと生きて帰ってくる。ということ。
そして「生物として、自分はどのくらいの能力の個体か」ということを探っている。それは、だいたい分かってきた。ダメな方向に(涙)。
さて、ほぼ2週間後は富士山だ!
いよいよ…だけど、私は行くのか? まだまだ半信半疑!
まずは皆に近づくためにトレーニングかな。
<蓼科山データ>
山頂 標高:2,530m
登山口 女神茶屋 標高:1,730m
ロープウェー乗り場 標高:1830m
登り 標高差:800m
下り 標高差:700m
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